過去の企画展:1992年度

 
 

アーティストの風貌 写真家のとらえた"個性"

会期:1992年4月18日-5月17日

 肖像写真は、写真本来の記録性に加え、人物の内面描写、心理表現といった、写真家の表現意欲が最も鮮やかに示されるジャンルといえる。とりわけ独自の個性を持つ芸術家の肖像を撮ることは、写真家の創造意欲を強く刺激し、数多くの傑作が生み出された。
 本展は、横浜美術館所蔵作品(写真)の中から海外の写真家28名および日本の写真家6名による、詩人ボードレール、画家ピカソ、女優のマリリン・モンローといった19世紀から現代にいたる著名な芸術家の風貌をとらえた写真200点によって、すぐれた肖像写真の魅力を紹介するものであった。
 

斎藤清 会津の冬

会期:1992年5月23日6月21日

 福島県会津坂下町に生まれた斎藤清は、版画、特に木版画の分野で優れた作品を数多く制作している。多くの作品のなかでもとりわけ有名なのが、雪に埋もれたふるさと会津を描いた「会津の冬」の連作である。1970年「会津の冬(1)窪」に始まったこのシリーズも、1992年春、100作目を迎えた、最初期の作品「会津の冬 坂下」(1940年頃)から考えると、実に50年以上にわたって、同じテーマで制作を続けていることになる。この希有な事実からは、このテーマに寄せる作家の並々ならぬ愛情と、制作し続けることへの強い意志を感じ取ることができる。
 本展では「会津の冬」が100作目を迎えることを記念し、この連作の全てを展示した。同時に、1940年頃から制作され続けてきた初期の「会津の冬」もあわせて紹介した。目まぐるしい変転を見せる現代の美術界にあって、時流に流されることなく独自の世界を描き続けている斎藤清の世界を展望するとともに、半世紀にわたって追及されてきた「会津の冬」をとおして、作家の関心や意識、作風の変遷をも窺うことのできる絶好の機会となった。
 

アメリカの遺産 絵画の150年

会期:1992年6月27日-8月2日

 アメリカ美術は、第二次世界大戦以後、世界の現代美術に強い影響力をもって出現し、そこで生まれた抽象表現主義やポップ・アート、ミニマル、コンセプチュアルといった新しい美術概念が、日本の戦後の美術にも大きな影響を与えてきたことは周知のとおりである。本展は、そうした現代美術を含め、わが国ではまだ充分に紹介されていない19世紀以来固有の伝統を形成してきたアメリカ絵画の諸相を、より巨視的に概観しようとするものである。
 19世紀は、広大な大自然の驚異を賛美したハドソン・リヴァー派の風景画や、写実主義の巨匠ホーマー、エイキンズを経て、明るく華麗な色彩を特徴とするカサット、サージェントらのアメリカ印象派へと続く。20世紀は、国吉康雄、ベン・シャーン、ワイエス、オキーフらのアメリカン・シーンとモダニズムの画家たち、現代美術では、マザウェル、ウォーホール、ジム・ダイン、ロンゴらの多彩な表現が展開され、写実と抽象の双方を極めてきたアメリカ美術150年の歴史を約120点により展望した。
 

吉井忠展 大地に響く人間の詩

会期:1992年8月8日-9月27日

 明治41年福島市に生まれた吉井忠は、ヒューマニストの視点から人間と社会を見つめ、写実を基盤とする重厚な画風で絵を描き続けてきた洋画家である。20 歳で帝展に入選するなど早くから才能を発揮した吉井は、一時期シュールレアリスムに関心を寄せ、美術文化協会など戦前の前衛的なグループにも参加した。やがて日本各地の農村漁村に生きる人々の姿に感動し、生活の中から生まれた民具や玩具の素朴な美を発見することによって、大地に生きる人々を主題にした作品を描くようになった。
 また吉井は、戦前から<池袋モンパルナス>と呼ばれた芸術家村に住んで長谷川利行、福沢一郎、松本竣介、靉光、寺田政明、麻生三郎、大野五郎らと密接な交流があり、日本の近代美術の一側面を語る証言者でもある。
 本展は60年以上に及ぶ長い画歴を持ち、現在も主体美術などを舞台に制作を続ける吉井忠の画業を、初期の作品から最近作までの油彩・水彩・素描あわせて134点と、ヨーロッパ、アジア旅行の折のスケッチなどにより回顧した。
 

スウェーデンのガラス1900-1970 白夜の国の抒情

会期:1992年10月10日-11月8日

 スウェーデンのガラス工芸は比較的歴史が浅く、ヴェネツィアやボヘミアなどの国々から影響を受けながら基礎を築いてきたが、二十世紀に入ってから飛躍的な発展をとげた。新興ガラス会社オレフォッシュ社が、シーモン・ガーテ、エードヴァルド・ハルドという二人の画家をデザイナーとして迎え入れたのをきっかけに、スウェーデンの主だったガラス工場は芸術家と職人による共同制作に積極的に取り組み始め、独創的なデザインのガラス器が次々と生み出されていったのである。
 本展では、ガーテ、ハルドをはじめ、そのあとをひきついで個性あふれる作品を生み出していったヴィッケ・リンドストランド、エードヴィン・エールシュトレム、スヴェン・パルムクヴィストなど、スウェーデン・ガラスの黄金時代を築いた作家たちの作品287点を一堂に展示し、スウェーデン・ガラスの清新な魅力を紹介した。
 

三岸好太郎と三岸節子展 愛と芸術の軌跡

会期:1992年11月14日-12月13日

 三岸好太郎(1903-1934)は、北海道札幌に生まれた洋画家で、昭和9年にわずか31歳で夭折するまで、春陽会や独立美術協会などを舞台に、大正末から昭和初期の画壇に忘れがたい足跡を遺した。初期の素朴な作品から、フォーヴィスム風のシリーズ、そして晩年のシュールレアリスムに影響を受けた幻想的な作品にいたるまで、さまざまに画風を変貌させながら一貫して詩情にみちた独自の絵画世界を築き上げている。
 一方、三岸節子(1905- )は愛知県起町(現:尾西市)に生まれ、女子美術学校を卒業後、好太郎と結婚した洋画家で、結婚した洋画家で、結婚した翌年に女性としてはじめて春陽会展に入選するなど、女流画家の先駆的存在として、現在も意欲的に創作活動を励んでいる。
 本展は、三岸好太郎・節子夫妻の画業の変遷を、油彩、水彩、素描など87点の代表作により回顧する初の試みであり、二人の画家の魂の交流と芸術の軌跡を展望するものであった。
 

ファイバー・アート 糸と布の可能性

会期:1993年2月6日-3月21日

 繊維素材を用いた染織の伝統に縛られない新しい造形、ファイバー・アートは、1960年代に現代的な新しいタピストリーを追及するなかで誕生した。70年代に入ると日本でも工芸の<用>から離れて美術を志向する作品が見られるようになる。その後、染めや絵画、彫刻といった他の分野からの参加や、使用される素材や技法の拡大によって多岐多様な表現活動が活発に行われるようになってきた。
 しかし一方で、今後の方向が見定めにくくなっていることも確かである。本展は、工芸と何かしらの関わりを持つ中で育まれた感性、思考を制作活動のベースに持ちながらも、それにとらわれることなく新しい可能性を追求してきたファイバー・アーティスト13名の作品を通じて、あらためて現状を見直そうとするものであった。
 
 











福島県立美術館
Fukushima Prefectural Museum of Art


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