活動レポート:2008年度

 
 

親と子の美術教室「蜜ろうで作るオリジナルクレヨン」



内容:子供にとって身近なクレヨン。ミツバチの巣を原料とした蜜ろうを使い、自然な風合いのオリジナルクレヨンを親子で作ります。
日時:2008年5月5日(月)10:00~15:00
対象:小学生の親子10組程度(申し込み多数の場合は抽選)
講師:小原典子氏(女子美術短期大学講師) 
経費:材料費として一人800円程度

 子供が、クレヨンや鉛筆とともに過ごす時間はどれくらいだろう。大人になって、子どもの頃のそんな時間にふと思いを馳せる人も少なくはないのではないか。今回は、親子で一日、オリジナルのクレヨンを手作りして楽しんだ。
 作り方は、固形状の蜜ろうをホットプレートで暖めて液状にしたものに、日本画の顔料と炭酸カルシウムを混ぜたものを溶かす。一度冷ましたのち、さらにてんぷら油固め剤を混ぜ、暖めてかきまぜながら液状のクレヨンを作る。
 予め準備した、粘土の板を土台に厚紙で自由に土手状の壁を作った型を作る。液状のクレヨンを流し込み、固まるまで冷めたら、型ごと、水に入れて冷やす。すっかり固まって、型からはずせば出来上がり。

  

 これまで、大人向けの講座で何度か、石や土から顔料を作ったり、油絵の具、パステルなど、絵の具そのものを手作りする講座を行ってきた。市販の絵の具や画材を購入して使うのが当たり前の現代では、絵を描くために「きちんとした手順に従わなければならない」と頑なに思いこんでいる人が以外に多い。
 しかし、「色のついた物質である絵の具の特性を生かす方法」を合理的に整理し、経験を踏まえて洗練させたものが、「技法」であることに気づけば、もっと気軽に、創造的に絵を描くことを楽しめる。絵の具の手作りはその点に意味があると考えられる。ともかくも、小学生の時に手作りのクレヨンでお絵かきできるのは贅沢な体験であろう。今回の教室では、大人も子供も、料理作りのような雰囲気の中、用意した材料と時間が許す限り、思い思いの色とかたちのクレヨンを貪欲に作りつづけた。材料はすべて人体に安全なため、親も子どもに安心して預けられる。(久慈伸一)

  
 

親と子の美術教室「光と色で遊ぶ―『光の箱』を作ろう!」



内容:色のついたセロファンやトレーシングペーパー、シート状の鏡などを組みあわせて、光にかざすと様々に模様が変化し、あざやかな色彩を映し出すふしぎな『光の箱』(松村氏が独自に考案した)を作ります。
日時:2008年6月29日(日)10:30~15:30
場所:美術館実習室
対象:小学生の親子12組程度(申し込み多数の場合は抽選)
講師:松村泰三氏(東北芸術工科大学准教授)→ 松村泰三 [Taizo Matsumura]ホームページ
経費:材料費として一人800円程度

  

 光は人間にとってなくてはならないものであり、光通信やアインシュタインの高速度不変の原理、天体観測など技術や科学の発達で様々な"顔"を見せ、いざ、意識すると身近でありながらとらえどころがなく、説明すると時に難解なものだったりもする。今回の、教室は、簡単な工作で光の美しさを楽しむことができる『光の箱』を親子で作った。
 午前中は、まずDVDに記録した松村先生の光の作品のインスタレーションが紹介された。モーターで回転する回転体に光りをあてると、様々な光の現象が現れる作品は、一見すると面倒なメカニズムを使っているかと思われるものであったが、光の三原色の光源や偏向フィルター、鏡など、光に関する基本的原理・材料を組み合わせてできていることが説明された。
 実際は存在していても、人間の目ではとらえられない光の現象など、存在すること、存在しないこと、見えること、見えないことなどを考えさせるものだった。
次に3台のスライドプロジェクターに赤、黄、緑の光の三原色のフィルターをつけ、スクリーンに投影し、光の重なりと色や影の関係を体感した。

  

 そのあと、2枚一組のガラスのスライドにフィルムの代わりに様々なものを顕微鏡のプレパラート状にセットし、スクリーンに投影し、何を写しているかを当てながら、光で投影された像が日常見慣れたものをどのように変化させるかを体験した。その後、受講者が色のついたセロファンを思い思いの形にしたり、薄いものをはさんでそれぞれのスライドを作った。
 午後にそれらを投影して鑑賞した後、いよいよ『光の箱』を作る。
 作り方は枠状の紙の箱の一方にトレーシングペーパーを貼り、鏡の性質を持つ薄いミラーフィルム(10×30cm)を様々なかたちの筒状にして多数つめて並べ、最後に反対側を色のついた薄いセロファンを貼って完成する。筒状のミラーシートに光を当てるとミラーに乱反射される光が光を当てる角度により複雑に変化するという原理を応用しており、テープ状に貼った赤、青、緑といった光の三原色のセロファンの色が混ざり合って、ミラーに乱反射し、トレーシングペーパーを透過した柔らかな光の像として見える。最後に、全員の箱を壁状に積み上げ、スライド映写機の光を当てて鑑賞した。(久慈伸一)

 
 

実技講座「Life Drawing~美術解剖学の視点から人体を見る・描く~」



内容:西洋美術において人体は、時代を超えて描き続けられている普遍的なテーマです。裸体を解剖学的な視点から観察し、描くことを通して、人体の構造や動勢、量感などを学びます。
日時:2008年5月25日(日)、6月1日(日)、8日(日)、15日(日)10:00~16:00  *全4回
対象:一般15名程度(申し込み多数の場合は抽選)
講師:渡辺晃一氏(美術家、福島大学人間発達文化学類准教授) 
経費:材料費として一人5,000円程度

 人間の骨格や筋肉の付き方など、人体の構造、メカニズムを理解把握しながら4日にわたって講義を交えながら男性および女性のヌードモデルをデッサンした。
 第一日目は、千円札の大きさを実物大に記憶で描く体験からはじまる。お札の長方形の縦横比など知識が記憶を強化する例が示された。次にスライドを見ながら、高村光太郎の「手」の彫刻が実際の人間にはできない造形になっていること、ダヴィンチの偽物の混じった八つの「モナリザ」の顔から本物を探すクイズなど、人間の視覚的記憶にまつわる話や、ヴィルテンドルフのヴィーナスなど原始美術のプリミティヴな生命観やミロのヴィーナスの理想的なプロポーションの美など人体の様々な美意識の現れについて講義があった。午後には、爬虫類のワニ、馬、人間の走る姿を想像で描き、次いで2枚の画用紙を自由に折り曲げて一枚は垂直に、もう一枚は4足歩行で立つ形を試しに作った。
 ここでは、人間と他の動物の骨格の相違と運動のメカニズムの関係について、胎児の成長過程に魚類からほ乳類までの進化の過程が再現されるという、個体発生は系統発生を繰り返すという生物学説を援用しながら説明がされた。さらに、人体の石膏モデルや鳩やミンクの骨格標本など各自選択して模写した。

   

 第二日目は人体の骨格・筋肉のしくみと体を動かしたときの各部の相互のバランスの関係を知るために、踵と腰を壁につけて立つと地面の物が拾えなくなるなど実際のポーズを様々試した。次に人体を描く際に記憶しておいた方がよい主な骨格や筋肉についての説明のあと、筋肉の構造を把握するため男性のヌードモデルのデッサンをした。
 第三日目は、西洋美術のキーワードである、プロポーション、コンポジション(構成)、バランス、奥行き、遠近法、マッス(量感)やヴォリューム(量塊感)などについてや男性と女性の解剖学的相違の説明のあと、女性のヌードモデルをデッサンした。
 最終回は、スライドを使いながら人間の顔の表情と筋肉の関係、一般性、個別性についての話のあと前回に引き続いて女性のヌードモデルをデッサンし、最後に各人の作品を前に合評会をして終わった。ものを見て描く際に対象を視覚的に観察するとともに構造を知的に把握することの大切さを再認識させる講座であった。(久慈伸一)

   
 

一日創作教室「自然を観察して描く―遠近法を体験する」


アルブレヒト・デューラー『素描家と座る人』

内容:透明アクリル板(30cm×40cm程度)に油絵の具やアクリル絵の具などで直接、風景や静物を描くなど様々な遠近法を体験しながら、見えるものを写すことや描くことのちがいなどを探ってみます。
日時:2008年7月20日(日)10:00~16:00
対象:高校生以上の一般15名程度(申し込み多数の場合は抽選)
講師:久慈伸一(当館主任学芸員) 
経費:材料費として一人1,800円程度

 写実、そっくり=絵が上手という思いこみの根源のひとつである、遠近法というものを実際に体感し、その限界を明確に認識、クリアーすることは、絵画を鑑賞し創作を楽しむのに役立つという考えから今回の教室が開かれた。
 はじめに言葉や知識として一通り知られ、主に建築等で使われる線遠近法の原理を美術館のエントランスホールの現実の空間の中で体感した。一辺60cmの正方形の敷石が碁盤の目にならべられているホールは、線遠近法そのものが体現された空間である。ホールの真正面から見れば一点透視図法の空間が示され、目線の高低に従って、床と背景の関係が変化することや、斜め方向から見ると二点透視図法に従うことを確認した。
 次に、美術館の前庭から見える風景が空気遠近法の原理、空気の層が近景から遠景に向かうに従い、風景を次第にぼんやりと霞ませ、青みがかって見えることなどを体感した。

   

 その後、実習室で透明なアクリル板を椅子などに垂直に固定して下準備し、実習室や美術館内、屋外などで、透明なアクリル板を透かして見える風景をアクリル絵の具を使って筆で直接なぞって描き取るという体験をした。これは、見えるままを写し取る透視図法そのものの経験である。視点を固定して描くことや、描き込んでいくほどに視界が遮られるなど、かなり忍耐を要する体験であった。午前中この作業を続け、固定した視点で見えるままを写すことが、いかに限定された行為であることを確認した。
 午後は、企画展示室でヴァルビゾン派から印象派、ナビ派など西洋の風景画、常設展の大正期の洋画や昭和の日本画、現代の抽象絵画を見ながら、遠近の表現や画面の構成、対象をどのように捉えようとしているかなど、絵画としての様々な空間について、作品に即して説明した。展示室には銅販画の風景もあり、線の集合による表現効果を体験するため、方眼紙にフェルトペンで様々な線の効果を試して終わった。いわゆる写実的な遠近法が絵画においては、全く限られたテクニックであることを体験し、絵を描く様々な習慣的な行為を改めて問い直す教室であった。(久慈伸一)

   
 

わんぱくミュージアム「夢みる世界」



日時:2008年8月9日(土)10:00~14:00
対象:小学生14名
講師:大岩オスカール氏 
経費:無料

 「大岩オスカール展」には、“世界の今”に通じる現実と仮想が入り交じった、独特な複合的なイメージの縦2メートル、横6メートルを超える大作も多く出品された。彼の制作は、入念な下絵の準備から始まる。雑誌の写真の切り抜きやスケッチを一つの画面にモンタージュするなど、様々なイメージを組み合わせ再構成する手法が用いられる。今回は、大岩氏の作画の手法を応用して小学生が絵を描く体験プログラムとして実施された。
 はじめに用意されたA3判のコピー用紙2枚を使ってスケッチするところからはじまった。各用紙には4つのマスが印刷されており、各マスには、
 (1)好きなもの、なんでも  (2)好きな動物      (3)好きな乗り物
 (4)好きな植物       (5)好きな昆虫      (6)好きな風景
 (7)好きな食べ物      (8)好きな人
など、8つの見出しがついている。受講生は、おもちゃや写真など自分の好きなもの、気に入っているものを持参することになっており、各自それらを見たり、記憶や想像をもとに鉛筆で描きすすめ、マスを埋めていった。
 約1時間後、オスカール展の会場に移動し、作品を前にオスカール氏の自作について制作法などの話を聞いたり、絵に隠れている動物さがしのクイズに答えるなどして約30分鑑賞した。その後マスを埋める続きをし、終えた人から八つ切りの画用紙に、マスに描いた絵を一枚の絵として構成しながら描いていった。

   

 午後は午前の続きから始まり、鉛筆で構図を描き終えると、水彩や色鉛筆、マーカーなどで色付けして仕上げていった。その間オスカール氏は一人一人の制作を見て、各自のアイディアに耳を傾けながら何をイメージしようとして、どのように方向づけていくか個別にサジェスチョンしていった。
 描き終えた順に自分の絵を持ってオスカール氏といっしょにデジカメで記念撮影し、プリントアウトした画像を貼った手製の修了証を受け取り、最後に各自の作品を全体で発表し終了した。
 いざ、まっさらな画用紙を前にして絵を描くことは、小学生でも大人でも、容易なことではない。今回の8つの手がかりをもとに、内在するモチベーションやイメージの糸口を見いだし、アイディアを整理しながら、構想に結びつけるというプロセスは、ことばとイメージ、イメージとイメージの連関を意識的に検討しながら作画するための有効な方法であった。(久慈伸一)

   
 

技法講座「フレスコを描く」



内容:生乾きの漆喰の壁に彩色する西洋の古典的壁画技法・フレスコでF6号(40.9×31.8cm)の模写による作品(オリジナルの作品も可)を描きます。
日時:2008年9月13日(土)10:00~16:30/14日(日)10:00~16:30 *2日連続
対象:一般初心者15名程度(申し込み多数の場合は抽選)
講師:森敏美氏(東北生活文化大学生活美術学科教授)
経費:材料費として一人3,000円程度

 フレスコは、砂と消石灰を水で練って作った漆喰の壁に水で溶いた顔料で描く技法。イタリア語のフレスコ:frescoは英語のfreshに相当し、新鮮なという意味で、生乾きの漆喰の壁に描くことからその名の由来がある。油絵のリンシードオイルや日本画の膠など、顔料を画面に接着する媒材を使って描く技法と原理が異なり、消石灰Ca(OH)2が空気中の二酸化炭素を吸収して炭酸カルシウムCaCO3に変化する作用を利用したものである。いわば石の結晶成分の中に顔料が取り込まれる故に、耐久性に富んだ画面が得られ、石の表面と一体となった顔料が生み出す色彩の風合いは他の技法に代えがたい魅力がある。
 講座の下準備の段階としてフレスコに使う消石灰は、純度の高いものを専門店から取り寄せた。砂は、川砂でホームセンターから20kg入りのものを入手し、プラ舟の中で水洗いしながら園芸用の篩(目の大きさが1.5~2ミリ程度)にかけ、大きな砂礫を取り除き、土や粘土分を洗い落とす。砂が沈殿した状態で上澄みの濁りがなくなるまで洗い、洗い終わった砂は土嚢袋につめて水分を切っておく。

  

 講座一日目。はじめに、消石灰と砂を体積比1:1で混ぜあわせ、水を少しずつ加え、消石灰のダマを潰しながら混ぜ、コテで持ち上げて状態を保つような硬さに練り上げた。次に基底材の準備として建材店から取り寄せた木毛セメントパネル(ひも状の木材をセメントで固めた建築壁材)をカンヴァスの木枠に釘で固定し、周囲に杉の板を漆喰を塗る厚みを考慮して打ち付け、簡易な額をつけた。下塗りは、パネルを水でぬらしたあと、水気を切り、漆喰を食い込ませるように3~4ミリ程度の厚さに施し、上塗りの食いつきをよくするため表面は適度に荒らした状態に仕上げた。
 最後に、美術館で用意した画集から、各自模写する作品を選び、適当な大きさに拡大したカラーコピーと図柄の転写に使う白黒のコピーを用意し、白黒コピーの図柄の要所を火をつけた線香で穴を空け転写用の下図を作った。

   

 講座二日目。描画用の上塗りとして漆喰をパネルに4ミリ程度の厚さで表面をなめらかに塗った。時間をおいて表面のテカリがなくなり、手のひらの拇指丘を軽くあてて漆喰がつかない状態になったら、下図をのせ、ガーゼに顔料を包んだタンポを軽くあてて、粉状の顔料を下図の穴から落としながら図柄を転写する。パネル表面についた粉状の顔料を、水をつけた面相筆でなぞりながら点をつないで図柄を起こしていく。輪郭ができあがったらカラーコピーを見ながら水で溶いた顔料で彩色して模写を進め、最後に合評会をして終えた。
 壁塗りの工程、描く状態の見極めなど、勘と経験を必要とし、手仕事に富んだフレスコの技法の魅力と奥深さを体験した講座だった。(久慈伸一)

  
 

わんぱくミュージアム「セッコウで作ろう!」



内容:水にまぜると固まるセッコウ(石膏)を粘土などで自由に作った顔や仮面、動物などの型に流して壁掛けや置物を作ります。
日時:2008年10月5日(日)10:00~15:00
対象:小学生15名程度(申し込み多数の場合は抽選)
講師:久慈伸一(当館主任学芸員)
経費:材料費として一人500円程度

 セッコウは主に粘土で作った像などを、型取りするのに使われる素材である。
 像を忠実に再現するには、像の外形を雌型に取り、粘土を掻き出した後、雌型にセッコウを流し、固まったら雌型を割り出して像を得るという行程が必要となる。
 今回は、小学生が粘土で自由に作った形を、セッコウに型取りしメモリアルなものとして残す初めての体験として計画された。そのため、失敗なくできるよう行程を簡単にし、家庭でやっても家族から苦情が出ないように必要以上汚さない様配慮して行われた。
 粘土で形を作り、へらで模様をつけたり、様々なものを押しつけ凹凸をつけた型にセッコウを流し込み固まった後、粘土を取り除き、できた雌型をそのまま作品に仕上げるといものである。凹凸が反転したものが出来上がるので予想と偶然が入り混じり、型取りの体験であるとともに版の体験の要素も含んでいる。
 はじめに、セッコウを扱う際、見通しをもって作業できるよう1kgのセッコウに対するおおよその水の量(約650cc)と、それを混ぜて固めてできたセッコウのブロックの塊(約23×12×2.5cm)を示し、使用する素材の量とできあがりのボリュームの関係をおおまかに把握できるようにした。
 次に、予め見本として、前日に成形した粘土の型にセッコウを流しておいたものから粘土をはずし、できあがりを確かめた。この時、型の作り方と作業行程を説明するほか、粘土に釘やボルトなど硬いものを押しつけて型押しの実際例を示した。

   

 粘土を成形する前に、A3判の紙に各自作りたいものを鉛筆でアイディアスケッチし、それを見ながら粘土にへらでアウトラインを描いて作り始めた。型が完成に近づいたらセッコウを流した時、漏れるような隙間がないか、型の外形の土手の高さは十分であるかを一人一人確認し、型ができた人からセッコウを流す作業に入った。まず、セッコウの溶き方として一回で使い切る量の水に、セッコウの粉を水面とほぼ同じ高さになるまで振り入れ、へらでよくかき混ぜ、型の半分ほどの高さまで流す。ここで補強が必要なものには、細い針金を切って入れた。次に残った高さまで新たに溶いたセッコウを流し入れ、セッコウが固まり粘土をはずすまで50分ほど待つこととした。途中、セッコウが硬化する過程で化学反応の熱で熱くなるのを触って体感した。冷めてから、爪で表面をこすり、傷がつく度合いで硬さを確かめながら、十分な硬さになった時点で粘土の型からはずして、余分な粘土を取り除き、水で洗って完成した。(久慈伸一)

   
 

親と子の美術教室「テラコッタで作ろう!草花のおうち」



内容:テラコッタ粘土を素材に、様々な形の自分だけの創作植木鉢=草花のおうちを作ります。乾燥・焼成後にアクリル絵具などで粘土の風合いを生かした彩色をして仕上げます。
日時:9月28日(日)10:00~16:00、10月19日(日)13:00~15:30 *2日連続
対象:小学生の親子12組程度(申し込み多数の場合は抽選)
講師:加茂幸子氏(彫刻家)
経費:材料費として一人500円程度

 テラコッタ(terracotta)はイタリア語の「terra:土」「cotta:焼いた」に由来する言葉で、800℃~1000℃で素焼きした陶器のことをさし、植木鉢、レンガ、埴輪、土器などで知られている。はじめに、美術館の日本庭園を見てまわって、気に入った植物をA4判の紙二つ折りにした上半分にスケッチした。実習室に戻って紙の下半分にスケッチした植物の根を想像で描いて、それを包むようにおうち(植木鉢)を作ろうということで、イメージを描いた。
 粘土で作る前に、実際にどんなものができるか講師の作った作品例を見た後、、イメージをもとにテラコッタ用の粘土約5kgを使って鉢を作り始めた。まず、かたまりの粘土から針金で板状の粘土を切り取り底面を作る。底面にひも状に丸めた粘土を積み上げて側面を作り、紐状の重なりの部分をしっかりとなじませるように手びねりで整形しながら器の形を作っていった。基本的な器の成形ができた後、装飾的な部分や細かな部分を作り、表面にセッコウで作った型を粘土に押し当てて模様をつけ、最後に底に水を抜く穴をあけて完成。早く出来上がった人は、余った粘土で好きなものを作って終えた。この日できたものを粘土板にのせたまま乾燥し、講師の加茂先生に陶芸用の窯で焼成していただいた。

   

 第二日目、焼成された作品にアクリル絵の具による色付けをする。乾いた状態では、絵の具がつきすぎるので、微妙な色調を出すために焼き上がった作品を水に浸して十分に水分をしみこませてから、水でうすく溶いたアクリル絵の具をスポンジにつけて塗り込んでいった。つけすぎた絵の具は、ぬれた布でふきとりながら、調子をつけた。色づけが終わると園芸用の腐植土を入れ、各自持参した種や植物、美術館の庭に落ちているドングリの実を植えた。最後に全員の作品並べて記念撮影して終わった。(久慈伸一)

   
 

実技講座「シルクスクリーンによるデザイン」



内容:紙だけでなく布、ガラス、金属、木、その他様々な素材に手軽に印刷できる版画技法シルクスクリーンで、Tシャツや布の壁掛けに、自由にデザインした図柄(B4判大:25.7×36.4cm程度)をプリントします。
日時:2008年11月8日(土)、9日(日)、15日(土)、16日(日) *4回連続・各回とも13:30~16:30
対象:一般初心者15名程度
講師:菅野朝宏氏{福島成蹊高等学校教諭)
経費:材料費として一人3,000円程度

 シルクスクリーンは、アルミや木製の枠に張った布(薄い絹の布、代用としてテトロンなどが使われる)のスクリーン(幕)を使って印刷する版画技法。細かい布の目を通してインクを刷り取るため、木版や銅版のように版と刷りとった図柄が反転しないのが特徴である。
 布目のインクを通す図柄の部分とインクを通さない部分を様々な方法で作りだす作業が、シルクスクリーンの製版である。講座では、感光法という写真製版の技法を用いて原画の図柄を製版した。
 まず、画用紙に描いた原画をトレーシングペーパーに黒のサインペンで直接写したり、コピー機にかけて写したもの(感光用のフィルム原版に相当)を作製する。専用のバケットに入れた感光乳剤をスクリーンに押し当てるようにしながら塗布し、太陽光(紫外線)を避けた場所でよく乾燥させる。感光乳剤を塗ったスクリーンに原画を写したトレーシングペーパーをしっかりと密着させ、専用の感光器で紫外線を約4分(使用する感光器によって異なる)照射し、感光させる。感光した部分の乳剤は膜状に硬化して残り、黒のサインペンで描いた図柄の部分は、感光せずに水に溶ける乳剤の状態で残り、それを水洗いすると図柄を刷り取れる版ができる。図柄以外にできた小さな点状の穴を乳剤を塗りこんで修正して再び感光させ製版を完了した。

   

 刷りの工程は、まず下準備として、印刷の際、Tシャツの布が平らな状態を保ち、ずれないよう、専用の板にデザイン用のスプレーのりを塗布し、Tシャツを密着させる。版を刷る部分の位置に合わせて刷り台にしっかり固定し、布用の水性インクを版にのせ、スキージという先端にウレタンゴムのついた印刷用のへらで図柄の部分にインクを詰め、スキージをスライドさせて版に圧をかけながらスクリーン越しにTシャツに印刷する。
 今回は作品を2版使って作り、Tシャツのほかバッグ、和紙などそれぞれ持ち寄ったものにも印刷した。紙に何枚も刷るのと異なり、一発勝負なので、講師の菅野先生のマンツーマンの指導で、全員失敗なく作品を作ることができた。(久慈伸一)

   
 

実技講座「日本画の描き方」


植田一穂「Figure ダイヤ」2003年

内容:各自描きたいもの(植物や風景、その他)を、予め準備したスケッチや下絵をもとに日本画の材料を使って6号(41.1×32cm)程度の作品を描きます。
日時:2008年12月6日(土)、7日(日)、13日(土)、14日(日)
   土曜日13:30~16:30、日曜日10:00~15:30 *4回連続
対象:一般初心者15名程度
講師:植田一穂氏(東京藝術大学准教授、創画会会員)
経費:材料費として一人15,000円程度

 日本画ならではの素材の特性を生かしながら、独自の作風を展開している植田さんを講師に日本画の基本的な描き方から、創作の進め方について体験した。
 講座第一日目は、描画の準備として、パネルに紙を水張りした。パネルの寸法に合わせ雲肌麻紙をのりしろを含めて切り、紙の裏面を水刷毛でぬらし、パネルの側面に市販のやまとのりを塗り、紙をのりづけして完成。
 次に画用紙に鉛筆で下絵を描き、トレーシングぺーパーに写し、その裏に鉛筆を塗り、パネルにあて位置を決め、図柄をなぞり本紙に転写した。

   

 第二日目は、鉛筆の図柄の上に面相筆と墨で骨描きして本下絵を作った。墨の線で、絵の完成を予想しながら、絵柄を決め、絵の骨格をつくる工程である。
 骨描きの後、日本画の絵の具について、絵の具見本および天然岩絵の具の原石標本を見ながら説明を受ける。日本画の絵の具として主に用いるのは色のついた固形粒子である顔料である。顔料は粒子の大小により、岩絵の具、水干絵の具に分類される。さらに水溶性の色材である染料、墨も使われる。それらの色材を膠(主に牛など動物の皮などを煮て作ったコラーゲンなどのたんぱく質を主成分とする接着剤)で紙に定着させて描くのが日本画である。
 誰もが使ったことのある水彩絵の具が一定の大きさの細かい粒子の顔料をアラビアゴムで定着させるのに対し、日本画では、様々な大きさの粒子の色材を組み合わせて膠で定着させるという点で大きな違いがあり、そこに日本画の技法的な可能性がある。

   

 絵の具の説明のあと、実際の扱い方に入る。岩絵の具を絵皿に取り、膠液(市販の三千本膠3本に対し水200ccを加えて一晩おき、湯潜して溶かしたもの)を適宜加え、よく練り、水を加え描きやすい濃度にし、絵の具を準備した。その後は、骨描きの上から彩色して、ひたすら完成目指して描き進めた。途中、金箔や銀箔の貼り方、予め刷毛で水を与えた画面に彩色するたらし込みの技法、加筆修正の方法など、様々な技法が紹介された。
 受講者各自の制作意図に応じて、マンツー・マンで進められた講座は、日本画の基本のみならず、表現の可能性を探る様々な試行を経て制作する、柔軟な姿勢が伺えて多くの示唆に富んだものであった。(久慈伸一)

   
 

一日創作教室「絵画を粘土で模写する~イメージの変換」



内容:絵画、イラスト、写真等をレリーフ状に模写したり立体に起こすなど、形・質感を粘土という素材に変換・再構成し、写真に記録します。この体験を通して、作ることと鑑賞することを双方向から探ります。
日時:2009年2月8日(日) 10:00~16:00
対象:一般12名程度
講師:久慈伸一(当館主任学芸員)
経費:材料費として一人1,000円程度

 物を媒介にしたイメージ、メッセージのコミュニケーションとして美術をとらえるための、“変換”というキーワードを軸にした講座である。
 描くということについて、写実的な絵を描く場合を例にすると、見えているものを紙やキャンバスの上に絵の具などの色や形の関係に置き換えて画面を作り上げる行為であることがわかる。一方、絵を鑑賞することは、色や形として表された画面を見ながら、鑑賞者が絵の中に認め得る文法を頼りに絵に託された意味を再発見し、再構築することであり、ひいては、様々な情報を参考に絵の背景を取り巻く関係までをも手繰り寄せることでもある。
 平面のイメージを立体物として表し、それを写真に記録するというプログラムは、美術教育の中で慣習的に行っている行為を、“誇張(デフォルメ)”を加えることで明確に意識化するための一つの方法である。好き嫌い、善し悪し、美的か否かなどの価値判断や、直観に頼る前に、有名・無名、主体を問わずに“あらゆる作品”にじっくりと向き合い、視ることと作ることを方法的に意識し、それらを相互関係的に捉えるために“変換”という考え方が役立つと考えた。

   

 講座のはじめに、彫刻の表現の方法を理解するために、美術館ホールに展示してあるマリソール「ママと私」、佐藤忠良「若い女・シャツ」、エミリオ・グレコ「スケートをする女」などの彫刻を見ながら、顔の表現、特に目を立体物としていかに表現しているか、手や指、顔など人体の各部分が足から胴体、頭部へと向かう彫刻全体の構成・力学の中にどのような意図、アイディアのもとに組み込まれているかを見た。これらの作例を通して、人間の顔や体が彫刻という立体物として表現される際、様々なアプローチの仕方があることを確認した。
 次に、受講者が準備してきた模写する図版や写真を見ながら、レリーフにするか彫刻にするかなど、各自のアイディアを検討したあと、彫塑用粘土を用いて制作を開始した。
 レリーフにする場合、絵画に近い平面的な状態から、実物を模した彫刻に近い状態まで、無限に存在しうる厚みの中から一つ選んで作るには、何を拠り所に、どのようなビジョンのもとに決めるか、人間、動物、風景など対象の違いについて、どのようにアプローチしたらよいかなど、試行しながら制作した。
 また、平面を立体化する際、絵を絵として普通に模写するのと違い、かたちをコピーするのではなく、受け止めたイメージを、どのような質感や立体を構成するベクトル(力と方向)をもった表現に変換するかなど、素材や媒体の違いがもたらす意味を考えながら行った。出来上がった作品は、各自写真に記録した後、コメントの発表と感想を交えて鑑賞し、最後にイメージ・もの・媒体・変換の関係を改めてまとめ、講座を終えた。(久慈伸一)

    
 

技法講座「木版コラグラフの技法」


花村泰江「マシーン・アイロン」2008年 木版・コラグラフ


内容:コラグラフとは、コラージュ(貼り絵)に由来する版画技法です。版木を彫り、紙や布を貼り付け、地塗塗料を塗って作ったレリーフ状の凹凸の面にインクをつけ、その表情を紙に刷りとる技法で22.5×15cm程度の大きさの版画を作ります。
日時:2009年2月28日(土)13:30~16:30、3月1日(日) 10:00~15:30 *2回連続
対象:一般12名程度
講師:花村泰江氏(版画家)
経費:材料費として一人2,000円程度

 コラージュ(collarge:貼り絵)に由来する版画技法コラグラフ(collagraph)は、版木に貼り付けた素材特有の凹凸が作る表情をプレス機などで圧をかけ紙に刷りとる即物的な技法である。これに版木を彫刻刀などで彫るなど、木版特有の線刻を加え、コラグラフと木版を併用したのが木版コラグラフである。
 第一日目は、凸版、凹版、平版、孔版など、版形式の説明と木版コラグラフの刷りに応用する銅板の一版多色刷りの技法、ヘイター法の解説の後、版作りを進めた。
 まず、下準備として、版木を彫刻刀で彫り進めた跡を判別するため、水で薄めた墨汁を版木の表面に刷毛で塗った。次に原画を描いてトレーシングペーパーに写し、カーボン紙に重ね、ボールペンで図柄をなぞり版木に下絵を転写する。それをもとに彫刻刀で線刻を施し、はさみやカッターなどで図柄の形に切った厚紙や布を木工用ボンドで版木に貼り付け構図を決め、タコ糸やひもなど柔らかく微妙な素材でアレンジしてゆく。さらにアクリル絵の具の地塗り剤ジェッソを原液のまま筆で塗ったり、たらして、筆のタッチや流動的なマチエールを施すほか、好みによって熱で溶ける特殊な接着剤で線を盛り上げた。仕上げに、スプレー式のクリアラッカーを2回ほどかけ補強し、版を完成させる。

   

 第二日目は、版作りの続きと、刷りの工程を行う。刷りはヘイター法(含まれる油の量が多いゆるいインクの上に油分の少ない硬いインクをローラーで載せても混ざりあうことがないという性質を用いた銅版の一版多色刷りの技法:考案者スタンリー・W・ヘイター)を応用して行った。
 まず、チューブから出した油性の版画用絵の具を彫刻刀で彫った凹版部に歯ブラシで詰め込み、余計な部分のインクを寒冷紗と人絹で銅版画を拭き取る要領で拭き取っておく。次にインク溶き用ワニスを混ぜて柔らかくしたインクを、ゴム製の硬いローラーで一番出っ張った部分に盛る。最後に、炭酸マグネシウムの粉末を練りこんだ硬いインクをウレタンの混じった柔らかいゴムローラーで、押し付けるように、中間部の高さの部分に載せる。このときローラーに巻きつけたインクを版面を滑らずに一回転で載せるため、ローラーの円周が版の長さ以上あることが必要。刷りは、予め水で湿らせた版画用のハネミューレ紙やレオバルキー紙を用いてエッチングプレス機にかけて行い、完成した作品を壁に張り、全体的な講評をして終わった。
 特有の肌触りや触感の異なる物を組み合わせた版が、インクや紙との出会いを通じてイメージに変容する様は、創造力を大いに刺激した。(久慈伸一)

   
 

わんぱくミュージアム「楽しいスタンプはんが」



内容:いろいろな形に切り抜いたスチレンボードに絵の具をつけて、はんこを押すように画用紙にうつしとってみよう! 並べたり、重ねたり、組み合わせたりしてB2判(72.8×51.5cm)程度の作品を作ります。
日時:2009年3月15日(日) 10:00~16:00
対象:一般初心者15名程度
講師:橋本淳也(当館主任学芸員)
経費:材料費として一人1,000円程度

 多様な版画技法の中でも凸版画は木版や芋版、はんこなどで親しみのある技法であり、彫刻刀で彫って作るのが一般的であるが、今回は版材に発泡ウレタンシートを使用した。クッション性のある柔らかい素材なのでハサミなどで容易に加工でき、用紙に押しやすいため刷りの失敗が少なく小学生でも手軽に版画の制作をする事ができる。
 午前中は版の作り方と凸版画の特徴である版と作品の左右が反転する関係などを説明し、版=スタンプ作りを行った。3mm厚のウレタンシートに好きな形を描き(凹みを付け)ハサミで切り抜いたり、ベニヤ板上に置いたシートに料理用の型抜きをのせて木槌で叩いて様々な形=版の凸部分を抜いて作った。切り抜いたシートにクギや楊枝などで更に凹み線を描いたり、穴をあけたりして模様や表情をつけた。次に切り抜いたシートを新聞紙上に置き、スプレーのりを吹きつけA2判(12mm厚)のスチレンボードに貼り付ける。これをスチロールカッターで扱いやすい形に切り抜いてスタンプが完成となる。

   

 午後は午前中に作ったスタンプで刷りを行った。あらかじめ中性洗剤をつけたスポンジで版面を水洗いして若干版面を荒らし、よく水気を切っておく。ポスターカラーを筆やスポンジで版面にのせて、用紙上でスタンプがずれない様にそっと手で押さえる。まずはB3判の試し刷り用紙に実験しながら刷りの感覚をつかんでいった。試し刷りをしてみて更にスタンプに手を加えたり、足りないスタンプはさらに作った。
 本刷りはB3判の版画用紙を使用。大きな画面に重なり・間隔・リズム・バランスなどを工夫しながら押していく。同じ版を並べて押してパターンを作ったり、絵の具の濃度や色を変えたりしながら「版」で描くように一枚の絵に仕上げた。
 最後に市販のアルファベットのスタンプで自分の名前のサインを押して作品の完成。完成後、全員の作品を美術館エントランスホールの壁に展示して作品を鑑賞して終了した。(橋本淳也)

   
 
 











福島県立美術館
Fukushima Prefectural Museum of Art


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